見事にハモった3人に対し、ペックとカーラ先生はやはり事情を知っているようで、黙って話しに耳を傾けていた。

「い、家出って…なんでまた…?第一王位継承者なら…」

「そう…次の王は私、です。でも、国を守るより、どうしても海に出たかったの。ずっと我慢してきたけど、やっぱり諦めきれなかった…だから、弟のカイル…カドゥイケル・ド・トイス王子が13才になって私が17才の時に城を脱け出し、小さな船でこの島に来ました。3年前の事です。」

「じゃあよ、今はその王子様が未来の王様って事になんのか?」

「ええ、そうね。
それが一番自然だから…」

「自然って…?」

「確かに、私はカイルの姉で、第一王位継承者になってはいたけど…父と…トイス王とは血が繋がっていないの。」

「養女…ってこと?」

きっと国の一番の秘密を聞いているだろうに、もう驚く事もなくなってしまっていた。
ニーナの言葉にシーファはうなずく。

「父と母は長く子供が出来なくて、国の存続に毎日頭を悩ませていたそうです。そんな時、城の裏の海岸に赤ん坊の私が流れて来たそうなんです。
両親は海の神の贈り物だと、私を拾って育ててくれたんです。
名前は『シルフェリア』と服に縫われてたの。
とても大切にしてくれた…はっきりとした思い出は無いけれど、暖かい気持ちが残ってる…でも…」

シーファの表情が少しだけ曇った。

「私が2才の時に母が亡くなったんです。元々、体の弱い人で…母が亡くなった1年後、父は再婚をしたんです。そして、カイルが生まれました。
小さいカイルはとても可愛くて…でも、日に日に王子として立派に成長していきました。そんな王子として生きているカイルを見て、私は自分が王女であるということに、違和感を感じ始めたの。」

「…姫様…」

心配そうなペックに優しく笑顔を見せて話しは続く。