「誰だ?…あのじいちゃん。」

「ペックじいちゃんだよ。この街の一番偉い人。」

いつもは威厳のある人なんだけど…とクルトは付け足したが…シーファの手にすがり付くペックの姿からはリュートじゃなくても、信じられなかった。

「ペックさん…先生…すみません…こんなことになってしまって…」

シーファはもう大分焼けてしまった家を見上げて、頭を下げた。

「一体何があったのです?」

「…話します…全部…でも、先に消火とみんなの手当てと、休む場所を…」

「火なら大丈夫。今すぐ街の男達が来てくれる。手当てはうちでするとしよう。みんなが休める部屋もある。」

ペックはシーファの手をとって促した。しかし、痛みで足が動かない。
と、ガルが軽々と抱き上げた。

「なっ…何者だっ!彼女にそのような…」

「いいの。この人達も一緒に行きましょう。」

シーファに言われ、しぶしぶペックは先を歩き出した。

「ひゅーひゅー
やるじゃん、ガル。」

からかいモードのリュートに冷たい視線を向ける。

「子供達を連れていってやれ。」

「へーい…冗談の通じねぇ奴。」

「バカ。あんた、状況が全くわかってないわね。」

ニーナがため息混じりに言った。
事は、思っているより重大だ。食堂で話していたことが、まさか、現実になろうとは…

ペックの屋敷に到着すると子供達は手当てと体を綺麗にするために、浴場に連れていかれた。

シーファは手当てを、というペックの言葉に首を振った。

人払いをされたペックの私室で真実が話されようとしていた。