「他の2人も逃がさないでっ!」

シーファの切羽詰まった言葉に反射的にのびているはずの2人の男達を見るが、すでに1人…リュートの方の男のその姿が暗闇に消えようとしていた。

「げ。」

「追って!―――うっ!」

追いかけようとするシーファの足が突然崩れた。
さっきの蹴りの着地が悪かったのだろう、酷く痛めてしまっていた。

男の姿は暗闇に消えていた。

「しまった…」

地面に突っ伏しながら、シーファは頭を抱えて悔しがった。

ガルがゆっくりと近づき、手を差し出すと、その手を強く引いて、シーファはガルの目を見つめた。

「ガルっ!今すぐこの島を発ちましょう!」

その迫力に目を丸くすることしか出来なかった。
しかし、それでもなお体を揺さぶるシーファの肩に手をかけた。

「落ち着けっ…俺達は何がなんだか…」

「シーファ姉ちゃん…いなくなっちゃうのか?」

クルトの言葉にシーファは我に返って顔を背けた。
他の子供達も不安な顔をしている。

「俺達はともかく、こいつらには説明してやれよ。」

「ダメ…です…このまま…海にお連れしてください…」

ガルの言葉に観念したように口を開こうとしたのを止めたのはさっきまで気を失っていた先生だった。

「先生っ…大丈夫ですか?怪我とか…」

「大丈夫です…それよりあなた達、彼女を連れて早く海に…暗闇に紛れて船を出せば行方はわからないでしょう。」

「ちょ…ちょっと待ってよ!何よ、突然そんなこと言われても…私達はシーファが王女っていうので頭が一杯で…」

かろうじてニーナが先生の話しにストップをかけた。リュートなんかはまだシーファの顔を見つめている。
すると、1人の老人が必死に走ってこちらにやって来た。

「みんな!無事か?シーファはっ?
ああっ!無事か…良かったぁ〜」

老人はシーファの側に駆け寄り安心したように両手をとった。