「なんでこんな事に?」

「分からないよ、突然、先生が逃げろって…」

「出てくる前に、火の始末はちゃんとしたのに…」

「それじゃ、誰かが故意に…?」

「ああ、そのとおりだぜ、お嬢ちゃん。
そこの女が家に居なかったのは予定外だったがな。」

「誰っ!?」

ニーナの言葉を肯定し、うすら笑いを浮かべていたのは、昼間、シーファに蹴り飛ばされた男とその仲間達だった。

「さっきはどうも、お嬢ちゃん。大事な家が無くなって残念だったなぁ〜」

「…………昼間の仕返しにこんな事を?」

シーファは小刻みに震えて言った。

「ああ、そのとおりだって言ったろ?」

「おまえらなぁっっ!」

飛び出そうとするリュートをガルが止める。

「ガルっ!なんだよ、ほっとけねぇだろ!」

「いいから、待ってろ。」

低く強いガルの言葉にリュートはとりあえず従う。
その身を震わせるほどの怒りを感じているのはみんな一緒だった。

「やらねぇのか?腰抜け野郎だな。」

「ガル、ありがと。」

シーファはそう言うと、後ろにいるクルト達に頭を下げた。

「ごめんなさい、私の考えが足りなかった…」

「そんなっ…姉ちゃんは僕の為に…」

「はっはっはぁっ!どうやら俺に手を出したのが間違いだったって、気付いたようだなぁ!」

男は下品な笑い声を上げる。シーファは男に向き直って静かに息を吐いた。

「ええ、間違いだった…あの場でこの島から追い出しておくべきだった。」

シーファの拳が男に向けられた。その瞳に怖いくらいの怒りを燃やして。