シーファの足は速くて、その姿はすでに見当たらなかったが、シーファ達の家はすぐに見つけられた。

夜なのにとても明るく、熱風が頬を撫でた。

「これは…一体…」

目の前のその家は、勢いよく燃え上がっていた。
結構大きな建物が、以前の風貌をみじんも感じさせないほどに…

「シーファ姉ちゃんっ!」

家の前には、10人ほどの子供達がその身を寄せあって震えていた。
クルトは背中から降りると子供達に駆け寄った。

「みんなっ、無事か?」

「クルト兄ちゃんっ…っく…ひっ…ミーシャと先生がまだ…うっ…」

「なっ!ミーシャっ!」

飛び出そうとするクルトをシーファは止める。
頭から水をかぶったようでポタポタと水滴が落ちている。

「ここで待ってなさい。」

「でもっ…」

「みんなをお願いっ!」

言われて、リュート達がうなづくのと同時にシーファは火の中に飛び込んで行った。

「シーファ姉ちゃんっ!」

「大丈夫だ、俺も行く。」

同じく水をかぶったガルが後を追った。


シーファとガルの姿が炎に包まれ見えなくなると、子供達はますます恐怖に身をこわばらせた。
そんな子供達にニーナは優しく触れた。

誰も何も言わず、ただ、シーファ達が入っていった場所を見つめていた。

「おい…ヤバイぞ…これ以上は…」

リュートが呟いたその瞬間、ほんの十数メートル離れた所が、ガタリと音を立て崩れた。

「!シーファ姉ちゃんっ」
「ガルっ!無事かっ?」

燃える壁を蹴り破って、2人は小さな女の子と、中年の女性を連れて飛び出して来た。
みんなが一斉に側に駆け寄る。

「ミーシャ!」

「大丈夫…早くに気絶したみたいで煙は吸ってないみたい…先生は?」

「ああ、平気そうだ。」

咳き込みながらのシーファの言葉にクルトは心の底から安心したように、ミーシャを抱きしめた。
他の子供達は先生を取り囲んでいる。