「……………………」

「聞こえませんでしたか?
あいつらへの攻撃を止める代わりに、私についてきますか?
と、聞いたんです。」

頭が白くなる、もし嫌だと言ったらヌルドは間違いなく…

「まだ決心がつきませんか?
では、次は、あいつらの頭の回りにあなたを包んでいた物と同じものを作りましょうか?」

冷たい声、冷たい目、ヌルドの全てが本気を表していた。

「あの中でもあなたが大丈夫だったのは、あなたが海の国の者だからですよ?

もし、ただの人間なら…」

ぞくりと寒気がシーファを支配した。

「私は、あいつらを殺したいばかりなんですよ。
でも、命を助けないでもないですよ?
あなたの返事次第では。」

シーファは無言でうなずいた。


「…取引成立、ですね。」

ヌルドはすっとシーファを抱き寄せると、額にキスを落とした。

そして、セイドとアリアを降ろすと、自分達の周りに球体を作った。
同時に部屋を仕切っていた壁が消える。

「シーファっ!
どうしたんだ、シーファぁっ!」

ガルが駆け寄る。
体は無数の針跡が残り、壁を殴り続けて、拳から血が流れていた。

「残念でしたね。
彼女はあなた方の無力さに呆れたそうです。
これからは私と永遠に一緒です。」

「嘘だっ!
シーファ!なんて言われた?
俺達なら大丈夫だ!だから…だからっ!」

シーファは、必死で叫ぶガルから視線を外した。

ガルの中の何かが、すぅっと落ちていく、そんな感じがした。

「そう、そう!その目が見たかった!
絶望を見つめる目!
最後に見られて本当に良かった。」

ヌルドはトライデントを振り、城の天井を破壊すると、ふわりと上昇を始めた。