「ねぇ、ガルの知り合いなの?この人。」

「いや、ただ店の前で偶然かち合ってただの世間話をしてただけだ。」

「店の前で…偶然…」

さらりと言うガルの顔をニーナは見上げる。嘘はついていないようだが、どうも信じられない。するとすぐ隣でリュートが声をあげた、それも耳を塞ぎたくなるような大声で…

「嘘だぁ!お前みたいな料理バカが偶然あった女と世間話出来るわけねぇよ!」

「料理バカ…誰のことだ?」


「げ………いや、その…」

ゆっくりとにじりよるガルにリュートは冷や汗を浮かべ、じりじりと後ずさりをする。
ニーナはあーあ、と言わんばかりに頭を抱えている。ガルの拳がリュートに落ちようとした瞬間…

「ぶっ…くくくっ…料理バカって…フフフっ…」

後ろからの笑い声に、ガルの拳がピタリと止まる。
声の主はガルの後ろで肩を震わせて笑っていた。

一同は唖然として彼女を見つめた。

「あ、あの…」

「え?あ、ごめんなさい。その、うちの家族みたいでつい…」

女は視線に気付くと目尻に浮かんだ涙をぬぐった。

「家族…まぁ、確かにそれに近いけどな〜な!ガルっ―――いてっ!」

笑顔で見上げるリュートに止まっていた拳が落ちる。

「んな事言ってもさっきのがちゃらになるかっ。」

「でも、料理バカっていうのは的を得てるんじゃない?」

女はいたずらっぽく、リュートに笑いかけた。