シーファは髪をかきあげると、アーターの巨体を足で踏みつけた。

「…シーファあっ!
無事だったんだなっ!」

「ありがとうっ!結構ピンチだったのよ。
助かったわ。」

こぼれんばかりの笑顔で駆け寄るリュートとニーナ。
アーターを飛び越えてシーファを囲む。

ガルはというと…じっとシーファを見ていた。

鎧を着ている…無理に着させられたのか?
あの巨体をあんなにあっさりと…
何より、例え敵でも倒れた者を足げにするか…?

たくさんの疑問が浮かんでは、シーファの様子を観察した。

「……ふっ…」

シーファの口から笑いが漏れる。

「…シーファ?」

「ピンチにまで追い込むなんて…命令違反よ。」

アーターを見下ろすシーファの目は、凍りつくほど冷たいものだった。

「――!!!
お前らっ!離れろっ!」

「え?」
「は?」

「…遅いよ、ガル。」

シーファが顔の辺りに上げた手で軽く何かを投げる仕草をした。

すると、後ろの滝から二匹の水の竜が現れ、リュートとニーナめがけて飛んできた。

「うぉっ!」
「きゃあっ!」

竜に襲われ、2人は立っていた場所からガルの所まで飛ばされた。
ガルはかばってやることすら出来なかった。

「…いて…」
「…な、に…?」

「やっぱり、しぶとい。」

「シーファ!なんでこんなことをっ!」

ガルの頭の中ではもう答えは出ていた。
しかし、聞かずにはいられなかった。

シーファはにっこりと笑う。

「なんでって…あんた達は私が殺すの。
………人間が。」

そこにいるのは、もう、シーファではなかった。