セイドが言っていた王家のバルームはすぐにそれだとわかった。

海を表す深い青色に刻まれた紋章。
なにより、他とは比べ物にならないほど大きかった。

「……これ…だよな?」

「でしょうね…」

「…でかいな…」

「…うん…いやいやっ!呆気に取られてる場合じゃないっ、早く乗って!」

ニーナが我を取り戻し、リュートとガルをバルームに押し込んだ。

ぼよん、と泡をくぐり抜ける。
流石、王家のバルームと言うだけあって、中も相当広かった。
3人は固まって操縦席に座る。

「ちょっと!狭いっ!」

「でも、広いとなんか落ち着かねえし…」

ニーナは諦めるとハンドルを握った。

「…………………」

「ニーナ?早く出せよ。」

「…これの動かし方、わかる人。」

『……あ……』

止まった時間、約3秒。

リュートとガルがニーナを見つめる。

「なによっ!知らないもんはしょうがないでしょっ!
時間があったって、バルーム運転することになるなんて思わないしっ、こんなに見たことないもの、短時間で動かせるようになるわけないでしょっ!

………そんな目で見るなぁああああっ!」

はあはあと肩で息をするニーナをリュートが落ち着ける。

「別にんなこと言ってねえだろ?
気付かなかった俺達も俺達だしよ、そんなに興奮するなって…な?」

「教えてもらうか、誰か人に来てもらうか?」

ガルの言葉に止まった時間、2秒。

「いやっ!
息巻いて出てきたのに、運転出来ないからってすごすごと戻るなんて…」

「…カッコワリぃ…」

「じゃ、どうすんだ?」

ニーナはもう一度、並んでいるレバー類に向かい合った。