暗い…ただ、ただ暗いだけのその場所でシーファは目を覚ました。

―ここは?―

目を開けているはずなのに、閉じているのかと錯覚するほどの闇の中。
視線を泳がせてみても、闇が見えるのみ。

手を差し出し、近くに物がないかを確かめようとする。
手は空を切り、バランスを崩して下に落ちた。
身を起こすと、お腹が痛い。
ビュウに殴られた事を思いだし、手を添える。
骨は折れてない、しかし、アザは出来るだろう。

ビュウに殴られ、そして…
斬られたシャツを握りしめる。
一緒に肌に刻まれた紋章もはぎとってしまいたかった。

悔しくて涙がにじむ。
悲しくて涙がこぼれる。

―私の顔を見てくれなかった…みんな…―

シーファは頭を強く振った。嫌な考えばかりが浮かんでくる。
黙っていなくなったあの時の絶望感がよみがえってしまう。

涙を拭うと、さっきまで寝ていた物に手をかけようとする。

おかしい…。何にも触れない。ついさっき落ちて、動いていないのに、闇に溶けてしまったかのように、そこには何もなかった。

―何よ、ここ…どこなの?奴らのアジト…?―

立ち上がり、手をつきだして歩いてみる。
全く何もぶつからない。
どのくらいの大きさの部屋なのか?壁にすら手は届かない。
だんだんと歩く速度が上がり、駆け出し、全力で走っても部屋の終わりはなかった。

―どこなのよっ!一体私をどうするつもりっ!?
出してっ、ここから出せぇっ!
みんなの所に帰してっ、ヌルドぉおおっ!―

腹の底からの叫びさえも闇が飲み込んでいくばかりで、なんの反応もなかった。

ぺたんと座り込み、また涙がにじんでくる。

―こんな事をしている場合じゃないのに、早く帰らないと、みんなが……―

待っててくれる。そう思っているのに、振り払ったはずなのに、急激に沸き上がってくる不安がシーファの心に焦りを生む。

ここに連れてこられて、一体、どのくらい気を失っていたのか?

数十分?数時間?…まさか…数日?

シーファは飛び上がり、必死で走った。
汗が吹き出し、涙は乾き、足が痛くなっても、部屋の終わりはない。

―いゃああああああっ!―