「おまえ、まぁた遅刻か?」

近所のヨシコさん(推定70歳ぐらい)が話しかけてくる。

「えぇ、別に学校行っても誰もおらんと思いますから」

そうなのだ。全校生徒はたったの4人。
先輩方が卒業すると自動的に一番上になるのだ。

今時、そんな学校も珍しい。
僕は適当に話を切り上げると、また学校にむけて自転車を走らせた。


遅刻を気にしなくても別にいい生活。
近所のみんなが元気に過ごしている町並み。

平凡な生活に、気づかない幸せがあることを、僕はこの時はまだ気づかなかった。