研究者たちは素晴らしき研究の成果を発揮した。新たに世界を創ってしまうという成果を。
しかしその成果も、彼らの願いを満足させるものではなかった。

「……とても大きなエネルギー体が、必要だった。それがなければ、コピーされた世界はただの器でしかなくて、生き物がそこで生きることは不可能だったの」

再び絶望の淵へと落とされた研究者たち。けれどある日突然、希望の光はやってきた。

「数年後、ひとつの小惑星がその世界に衝突したわ。けれど地下奥深くにいたおかげで、彼ら人間に被害はなかった」

地上に残された隕石。その隕石の中に埋まっていた深い緋色に色づいた石の塊は、誰も見たことがないものだった。
そして彼らがその石の秘密に気付くのに、時間は掛からなかった。

「石は〝スピラ〟と名付けられた。……そしてスピラは、不可能を可能にするものだったの」

研究者たちは喜悦した。なぜならスピラは、濃度の高いエネルギーの固まりだったからだ。

「ある一人の研究者が、亡くなった娘の器(コピー)を創った。そしてスピラの一部を埋め込んだ」

本物の世界で彼女が目覚めることはなかった。けれど偽物(コピー)の世界に移し、程なくして、彼女はついに覚醒した。
何もない暗闇を、彼女はただ呆然と眺めていた。そして彼女の頭の中に、誰かの声が響いた。