おもむろに振り向く少女。憂いを帯びたその瞳。

「何も知らないその無垢な心が、羨ましい」

光に手を伸ばす強き者と、希望を捨ててゆく弱き者。
彼女は言う。妬ましげに言う。

「あなたが、〝私〟だったらよかったのに」

皮肉な言葉と、わびしい思い。
息詰まる彼に、彼女は小さく幸せを逃した。



第四章―嬉しさと、隠れる心