陽が燦燦(さんさん)とふりそそぐ中、青年は身を屈め、機関銃を構えていた。
街外れにある廃家の中で身を潜めている男には、まだ気付かれていない。

「出てきた瞬間に、撃つんだ」

自分に言い聞かせるように呟き、精神を集中する。
撃ち殺すためらいなど、少しもなかった。
自分に銃口が向けられているとは知らないその男は、辺りを何度も見渡し、右足を引き摺りながら、こっそりと外に一歩踏み出した。

刹那、銃声が響く。

「……即死だな」

仮に息があったとしても、頭を撃ち抜かれたんだ。長くは持たないだろう。

立ち上がり、機関銃を肩に掛ける。
倒れている男を一瞥(いちべつ)したが、すぐにその場を去って行った。

「街外れに敵一人有り、か」

初めは抵抗があった暗殺の命令も、今は素直に従っている。

「人を殺すことに慣れてしまうなんて、滑稽だな」

それにあの男は右の太ももに白い布か何かを巻いていた。
大方、弾丸が貫通し、自分の戻るべき場所に行くことが出来ず、あそこで一夜過ごしたのだろう。
けれど怪我をしていようと、銃を一丁でも持っていれば、簡単に人を殺せる……。

UGCで暮らす人々を守るために、誰かの全てを奪う。
街の人々からいくら称賛されようと、結局、兵士(俺)は英雄でもなく、それどころか殺人鬼なんだ。

「人として、俺は最低な存在になってしまうなんて」

立ち止まり、小さく青年は嘲笑う。
自分の手のひらを、じっと見つめた。

〝英雄〟に憧れ、それを手に入れ、誇りを持った。
本当はそれが、ただの〝殺人鬼〟だと気付きもせずに。
だからこそ、気付いたときに愚かさを味わう。