サファイヤアンドロイドの夢

「そのボタンは、私に直通しているわけではない。私の部屋に……、」


男のしていることがわからずに私は混乱する。
自分の名前以外に社会の常識も忘れてしまったと言うのか。


「ジェイル。」


男が掠れた声で私を呼ぶ。
ライラ以外から呼び捨てにされるのは久しぶりだ。


「……だったよな?」


私が返事をしないので、男は自信なさげに聞き返す。
私は頷き、男が何を言い出すのか身構える。


「ファーストネームは?」


男はそれだけ言うと、私の返事を待つ。
私は考える。
この質問に何の意味があるのかを。