「目が覚めたか?」
まだぼんやりしている男に聞いてやる。男の唇の端は紫色に変色し、瞼も腫れぼったい。
「大丈夫か?」
男は無言で私を見ている。しゃべりたくてもしゃべれないのか、しゃべるつもりなどないのかわからない。
「用があったら呼んでくれ。そこのボタンを押せばいい。私の部屋に直通だ。」
私は、枕もとのボタンを指し示す。
男はゆっくりと首を巡らせて枕もとのボタンを確かめ、私の方に向きなおす。
私は頷き、部屋を出ようとした時に、背後でボタンを押す音がした。
振り向くと男が、にやりと唇を上げて笑った。
いや、笑う努力をした、と言った方がいいかも知れない。
それほど痛々しい笑顔だった。

