男の後姿が完全に視界から消えてから、
もう一度両手で顔を覆う。

まだ男に抱き締められた感覚が残っていた。
2日後には殺さなくてはならない男だ。
私たちの理想の生贄として。

Mr.Dでない、と言う証拠など見つからなくても、顔が違うと言う理由さえあれば、死刑は実行出来るだろう。そうしてその効果は絶大のはずだ。
私たちはもう一度団結することが出来る。

こんな……、私は机の上の書類を見る。
脱走兵の問題にも悩まされなくなるはずだ。

私は、書類を処分用のファイルに入れると、そのまま部屋を出た。
本部に行って、集会準備の進み具合をチェックしなければならない。
部下に車を用意するよう命令し、男の様子を尋ねた。
男は部屋でライラと話し込んでいると言う。
私は、男に見張りをつけるよう言い残し、本部に向かった。

いつまでももやもやした混沌は私の胸から消えなかった。