サファイヤアンドロイドの夢

博士は、息子の性格も癖も、すべてインプットし、
息子の記憶すら、都合の悪いところはすべて消した上で転写していた。
父は、私に、政府に頼まれて秘密の研究をしている、と言った。
秘密が漏れては国家の威信に関わるから、こんな山奥に隠れて暮らしているのだと。
母との事も、火事の事も記憶から消されていた私は、その話をすべて信じていた。
だが、やがて偽りの安らぎも壊される時が来た。

妻と息子を焼き殺したマッドサイエンティストとして指名手配されていた父が、
食料の買出しに行ったマーケットで通報されたのだ。
父は、私達二人を連れて山奥へ逃げた。
その時、父はすでに狂っていた。
いや、随分と前から、狂っていたのだ。

母と私を信じられなくなった時から、少しずつ、少しずつ、狂い始めていたのだ。