「歌恋。ほら、これ」
テントの前で星空を見上げていると、虫よけスプレーを手にした良ちゃんが、あたしの腕や足にスプレーを吹きかけてくれた。
その瞬間に、少しすっぱい匂いが広がる。
「ありがと。今年は良ちゃんのおかげで無傷で済みそうだね」
あたしが言うと、良ちゃんは呆れたように肩をすくめた。
「ねぇ、せっかくみんな起きてるんだからさ、海の方に行ってみようよ」
提案してきたのは、海だ。
「いいね! 行こうよ! みんなで夜の海」
海のことが好きだという噂のルナちゃんが一番に賛成した。
あたしはルナちゃんの隣に行き、「このこの」と二の腕を突っつく。


