数メートル先に、圭がいる。
携帯から聞こえるこもった圭の声ではなく、生の声。
高校の頃より少し明るめに染めた茶髪に、少しだけたくましくなった二の腕。
眉をハの字に垂らして、眉間に力を入れあたしを見ている。
「圭……」
体が、勝手に動いた。
「圭!!」
自然と、圭に向け走りだした体。
潮風に前髪とスカートが揺れる。
圭に突進して、勢いよく抱きついた。
広くなった圭の肩幅に、強く腕を回す。
あれだけ、圭に会うのに躊躇いがあったのに、こうやって本物の圭を見たら、駆け出さずにはいられなかった。
「……歌恋」
耳元で、戸惑う圭のかすれる声がする。
「おまえ……なんで、ここに……」
「会いたかったよ!圭っ!!
すごく、会いたかった!」
圭の言葉を遮って、更に抱きつく。
「ごめんね、圭。
あたしから遠ざかるようなことして、ごめん」
「………」
「あたし、嫌だよ!
圭とこのまま終わってしまうのは、絶対嫌だよ!!」


