「もう大人になったから、階段を駆け降りるなんて子供っぽいことはしないの」
あたしが言うと、お母さんは『調子のいい子』と言って苦笑した。
あたしはお母さんに車で港まで送ってもらった。
港に着くと、良ちゃんと学校のみんなが見送りに来てくれていた。
「みんな、来てくれたんだ」
あたしが駆け寄りながら言うと、みんなの笑顔がこちらに向いた。
「当たり前じゃん!
手くらい振らせてよ」
ルナちゃんが、あたしの横にピョンと飛んでくる。
「ありがと」
「歌恋、遅刻せずによく来れたね」
あたしと同じように大きな荷物を抱えた良ちゃんが、イタズラっぽく言う。
「もう、大人になりましたから」
さっきお母さんに答えたのと同じように答えると、良ちゃんや他のみんなが爆笑し出した。
サッと周りを見回したけど、圭の姿はない。
あたしが来ないでと言ったんだから、来てるはずないんだけど……


