リビングからコーヒーサーバーを手にしたまま顔を出したお母さんの言葉を遮り、あたしは雑に靴を履いて玄関を出た。


玄関を出た途端、少し強い風が吹き、あたしの前髪がファサっと上がる。


門の前に、自転車にまたがり不機嫌な表情をする圭がいる。


キラキラと茶髪を光らせながら。


「どうしたの?」


門を閉めながら、ポカンと聞く。


「良久、風邪みてぇだな」


「え?」


そういえば、昨日何度かくしゃみをしていたっけ。


良ちゃん、ケガとか風邪に弱いタイプなのに、大丈夫かな?


「乗れよ」


圭が、自転車の後ろを顎で指す。


あたしは躊躇いながら、自転車の後ろに回る。


すると圭は、自然な流れであたしの肩からスクールバックを取って、前のカゴの中に入れてくれた。


「あ、ありがと」