「ほら、貸せよ」


圭はあたしの肩に下がるスクールバックに手をかけ、自然な動きでバックを自転車のかごに入れてくれる。


「あ、ありがと」


緊張で声が震えていないか気になって、思わず小声になってしまう。


ぎこちない動きで圭の背中に周り、肩を掴んで自転車の後ろに立つ。


圭がペダルをこぐと、すぐにサーっと風を切って進みだした。


冷たい風が頬を指していく。


手がかじかむ程の寒さではないけど、自転車のスピードが上がる度に体感温度が低くなり、鼻水がズルズルと出てきた。


「受験終わって気が抜けたんじゃない?」


圭が前を向いたまま、鼻水をすするあたしに言った。


「別に風邪ひいたわけじゃないよ」


そう言いながらズズズと鼻をすすり、咳まで一発。


「ほら。
それ、完全に風邪じゃん?」


「心配しなくても大丈夫だよ。
圭にはうつさないから」