小さな恋の虹〜キミと描く夢〜



「圭……泣いて……」


「取るな」


あたしが鬼の面に触れようとしたら、圭が慌てて面を押さえた。


「……取るな」


圭の震える声が、鬼の面にこもって聞こえる。


苦しそうに、涙を堪える圭の声。


面を押さえ、珍しく肩を上下させて泣く圭を見て、あたしは唇を噛みしめた。


泣くな……。


ここで泣くのは、あたしじゃない。


あたしが、圭を支えなきゃ……。


きっと、圭は色んな思いを乗り越えてここに来たんだ。


お母さんのお葬式で一切涙を見せなかった圭。


参列者に大人の振る舞いをしていたけど、本当は、心が爆発しそうなくらい辛かったんだよね?


ずっとずっと我慢して、圭なりに悩んだんだ。


「……母さんが死んで、俺、ずっと悔しかったんだ」


圭は、大きく息を吐きながら声を出した。


「医者になるって決めたのに……何にも出来ないまま、母さんを死なせてしまった」


……圭。