「病室……移ったんですか……?」
声が震え、瞬きをすると、ポトリと頬に雫が伝った。
「……ああ。ついさっき……別の部屋に移ったんだよ、歌恋ちゃん……」
おじさんの語尾も震えていて、最後の方は殆どよく聞こえなかった。
「もう、苦しくもないし、高熱にうなされることもないし……」
「…………」
「本当に幸せそうな顔をして……最も美しい場所に引っ越しをしたんだ……」
おじさんの大きな二重の目がけいれんし、多くの涙が零れ落ちた。
稔くんとおじさんの嗚咽が、病院の廊下に響く。
そうか……おばさんは、引っ越しをしたんだ……。
もう、苦しむことのない、最も、美しい場所に……。
そっか……そうなんだ……。


