圭の白い肌に真っ赤な着物が映えて、まるで、圭がキレイな鬼みたいに見える。


あたしはゴクリとつばを飲み込み、細かく瞬きを繰り返して一言も言葉を発さずに前を向きなおした。


ブンブンと頭を振る。


ダメダメダメダメ!


圭を直視したら、絶対にダメ!


美しすぎる鬼に、心臓を食べられてしまう。


あたしは心臓を掴んでから、一回深呼吸をした。


着物を羽織って真面目に練習をしていた良ちゃんは、すでに完璧。


鬼の面を付けてもよろけることなく、きちんとゆっくりしたテンポで体を動かし先生の見本の動きに合わせていた。


あたしは、鬼の面を付ける前にもう一度鬼の顔をみてみる。


何をそんなにイライラしているのか、鬼の眉間には深いシワがたくさん寄っていて、目もキっとつりあがっている。


やっぱり、本番が終わっても、表情は変わらないと思うけどな……。