「……歌恋」
おばさんに着付けをしてもらいお店に戻ると、浴衣姿のあたしを見た圭が目を丸めた。
ちょっと恥ずかしくなって、俯き加減に頭をポリポリかく。
「おばさんの浴衣、ちゃんと着こなせてるかな」
そーっと圭を見ると、圭はあたしからフイっと視線を逸らし、「まぁ、それなりには」と素っ気なく言った。
それなりには……って。
どうなの?
今日はいつもより早くお店を閉め、圭とふたりでここから徒歩10分の神社へ向かう。
夕方17時。
雲の少ない晴れた空から、大きな夕日が島全体を照らしている。
茜色に染まる外に出ると、まるでカメレオンになったかのように、あたし達の体も茜色に染まり始めた。
アスファルトに下駄が当たる度、カランカランと軽やかな音が鳴った。
制服や短パンを着ている時は、大股で歩いたり走りまわったりしているのに、今日は浴衣の裾幅が狭くて、ノロノロ歩きになってしまう。
けれど、圭の肩があたしより前に出ることはなかった。
ちゃんと、あたしの歩幅に合わせて歩いてくれてる。
下駄がカランカランと鳴る度に、脈拍が速くなっていった。
なんか、デートしてるみたい……。


