「黒地だから地味かなって思ったけど、歌恋ちゃんが着たら可愛くなるでしょ」
着てみて。と、おばさんが浴衣を少し上に上げる。
あたしは着ていた短パンとTシャツを脱ぎ、おばさんに浴衣を着せてもらう。
サラリと肌を通る浴衣。
鏡台の前に立たせてもらいただ浴衣を羽織っただけの状態で、体を左右交互に鏡に映す。
ちょっと、大人になった気分。
次に箱から出てきたのは、薄紫の帯だ。
おばさんが何本かの紐で浴衣を固定させていき、少しずつ形になっていく。
「おばさんね、こういうのやってみたくてずーっと取っておいたのよ」
鏡越しにあたしを見て、おばさんがニッコリ微笑む。
「いつか女の子が生まれたら、将来この浴衣を着せて一緒にお祭りに行きたいな~って」
「そしたら、ふたりとも男の子だったんですね」
あたしが言うと、おばさんは困ったように笑った。


