「決まりね」
おばさんがお茶目に肩をすくめる。
良ちゃんは、あたしが浴衣を着るなら仁平に着替えてくると、颯爽と帰って行った。
盛り上がるあたし達を見て、結局、圭も行くことに。
あたしは勉強道具を片付け、おばさんのあとについてお店を出た。
「あの子も、素直じゃないわね」
あたしの前を歩くおばさんが、あたしを振り返り微笑んだ。
「本当は歌恋ちゃん達とお祭り行きたいのに、自分からは言わないんだから」
「そこが圭らしいですよね」
あたしが言うと、おばさんは「誰に似たんだか」と口元に手を当てて笑った。
だけど……。
その笑顔にはあまりにも弱々しく、今にも壊れてしまいそうだった。
圭の家に着き、畳の部屋に入る。
おばさんは押入れを開け、中から長方形の平らな箱を取り出した。
フタを開けると、中から、黒地に白い牡丹の花がデザインされた浴衣が出てきた。
「うわ……きれ~」
思わず、ため息の出る美しさ。


