「やったー! 綿菓子買って~、金魚すくいして~、それから~」
指を折ってやりたいことを全部上げると、圭が「ガキかよ」と言って笑った。
調子のいいあたしに呆れてハっと笑う圭だけど、笑う目元や口元はとても優しかった。
「あ、歌恋ちゃん! 浴衣着ていく?」
「え? 浴衣?」
おばさんがパチンと手を叩いて、目をキラキラさせた。
「おばちゃんが昔着てた浴衣があるの。デザインも今のものと変わらないから、着てもおかしくないと思うわ」
浴衣か……。
小学生の頃はお母さんによく着せてもらってたけど、もうずっと浴衣買ってなかったからな。
「着てやれよ、歌恋。母さんの夢なんだよ、そういうの」
圭が優しく微笑みながら、お母さんを見ている。


