「はいっ、撮るよ! 笑って!!」
海は、あたしの席の前で立ち止まり、急にデジカメの画面を覗き込んだ。
カメラを向けられたあたしは、両手を顔の前に出し顔をそむける。
「歌恋ちゃん、どうして顔よけるんだよ? ちゃんとこっち向いて笑ってくんなきゃ?」
カメラから逃げるあたしに、デジカメを下ろした海が頬を膨らませた。
ひとつ年下なのに、あたしのことを名前で呼び、敬語なんて使わない。
全校生徒が15人しかいないし、みんな小さな頃からの知り合いで兄弟のようなものだから、今更敬語を使われた方が違和感がある。
それに、名前で呼ぶ理由は、この島には同じ名字の人がたくさんいるから。


