ジャックは叶子の隣に座り、紙袋から服を取り出した。服を包んでいる薄い紙から服を出し叶子に合せると、うんと一つ頷いた。
「なかなかいいんじゃない、良く似合ってるよ」
「なんだか悪いわ。洗えば済む事なのに」
「いいんだよ。君に贈り物なんてそう言えばしてなかったし」
「チョコ貰ったよ?」
「ああ。そんな事あったね」
ジャックはバレンタインデーの事を思い出して少し照れているのか、叶子から視線を外した。
タグがまだつけられている事に気付いたジャックは、叶子に見られない様に服をくるくると丸めデスクにハサミを取りに向かった。
「─―? ……っ!」
深い理由もなく叶子は丸められた服を広げる。洋服についているタグの金額を見て叶子はわが目を疑った。
「ち、ちょっと、この服ゼロの数が多すぎるんだけどっ!?」
ハサミを片手に戻ってきたジャックは、少し残念そうに眉根を寄せた。
(ああ、ジュディスは最後の最後にミスをするなぁ)
「ん? ああ、まぁこんなもんでしょ?」
「こんなもんって」
「それよりさ……僕も少し質問していい?」
シャキンシャキンと空を切る音が何回かさせた後、服を広げながら伏し目がちにそう言った。
──ついに来た。
一体何を聞かれるのだろうか。今日、自身の身に一体何があったのかと聞かれたら素直に答えるべきなのだろうか。正直に答えたとして、再び険悪なムードになるのを叶子は恐れていた。
ジャックにも聞こえてやいないだろうかと心配するほどに、どくんどくんと心臓が大きく脈打つ。そしてジャックは俯いたまま、その重い口を開いた。
「彼を、あの……ケントって子を」
「う、ん」
予想通り健人の名前が出てきて思わず息を呑む。しかしジャックの言葉はそこで途切れ、言葉を選んでいる様な様子だった。
叶子の肩にかかったジャックのコートを取り、叶子のジャケットのボタンを一つ一つ外していく。その邪魔にならない様に、叶子は両手に握り締めていたマグをテーブルに置くと、ジャックの指先を見ながら彼の次の言葉を黙って待っていた。
「──君はどういう風に思ってるの?」
叶子のジャケットを脱がせソファーの背にかける。そのまま両手を彼女の腰に持って行くとカットソーの裾をつまんだ。
「別に……単なるお調子者の後輩ってだけで、貴方が勘違いする様な事は何も」
ジャックがカットソーを捲り上げようと持ち上げた時、
「はい、バンザイして」
そう言われて、何の抵抗もなく言うとおりに腕を上げた。スポンッとカットソーが脱がされキャミソール姿になる。叶子の脱いだカットソーを丁寧にたたみながらまたソファーの背にかけた。
「じゃあ、何もないんだね?」
「う、ん」
何も無いかと問われたらそうでは無い。ジャックと会えなかった時期は健人に優しくされて少し気持ちが揺れた事はある。だが、そこから先へ進もうとは一切思えなかった。
「わかった」
それだけ言うと、ジャックは立ち上がり叶子に両手を差し出す。
「立てる?」
その手に自分の手を重ねゆっくりと立ち上がる。ジャックは叶子の腰に手を置きスカートのジッパーを探した。
前から抱きしめるような形で両手を後ろに回し、叶子の背中の上から覗き込むようにしてスカートの後ろにあるホックに手を掛ける。邪魔にならないようにと極々自然に叶子は腕を浮かせた。
「あの、他は? 他には何も聞かないの?」
「聞いて欲しいなら聞くけど?」
「いえ、結構です」
耳元で彼がくすりと笑う。そして、スカートのホックを外し終えると次はジッパーを降ろし始めた。
ジジジジッとジッパーが下ろされる音が聞こえ、お腹周りがふっと緩む。一番下まで下げられた時、そこで何故かジャックの動きがピタリと止まった。
「……僕、君に何て聞こうか、何て答えが返ってくるのか、って思うと凄く動揺してて気付かなかったんだけど」
「う、うん」
「今、僕凄い事しちゃってるよね」
「え?」
ストンと叶子の足元にスカートが落ち、足元を囲うように溜まる。
叶子も同じく頭が混乱していてジャックにされるがままであったが、よくよく考えるとまるで着替えを手伝ってもらっている小さな子供の様だ。彼に服を一枚ずつ脱がされ、今ではキャミソール姿。ジャックは自分を抱きしめる形で動きが止まっていて、ほんの少し身体を動かせばすぐにでも体温を感じる事が出来る距離にいるという事に二人は今更ながら気づいたのであった。
すぐ横には屈みこんでいるジャックの顔がある。急に意識してしまったせいで心臓が激しく鼓動を刻みだした。
薄暗いこの部屋はビル群の明かりが良く映えている。このシチュエーションと今の自分の状態を考えると、彼の職場にいるというのに急に体が火照りはじめたのがわかった。
「なかなかいいんじゃない、良く似合ってるよ」
「なんだか悪いわ。洗えば済む事なのに」
「いいんだよ。君に贈り物なんてそう言えばしてなかったし」
「チョコ貰ったよ?」
「ああ。そんな事あったね」
ジャックはバレンタインデーの事を思い出して少し照れているのか、叶子から視線を外した。
タグがまだつけられている事に気付いたジャックは、叶子に見られない様に服をくるくると丸めデスクにハサミを取りに向かった。
「─―? ……っ!」
深い理由もなく叶子は丸められた服を広げる。洋服についているタグの金額を見て叶子はわが目を疑った。
「ち、ちょっと、この服ゼロの数が多すぎるんだけどっ!?」
ハサミを片手に戻ってきたジャックは、少し残念そうに眉根を寄せた。
(ああ、ジュディスは最後の最後にミスをするなぁ)
「ん? ああ、まぁこんなもんでしょ?」
「こんなもんって」
「それよりさ……僕も少し質問していい?」
シャキンシャキンと空を切る音が何回かさせた後、服を広げながら伏し目がちにそう言った。
──ついに来た。
一体何を聞かれるのだろうか。今日、自身の身に一体何があったのかと聞かれたら素直に答えるべきなのだろうか。正直に答えたとして、再び険悪なムードになるのを叶子は恐れていた。
ジャックにも聞こえてやいないだろうかと心配するほどに、どくんどくんと心臓が大きく脈打つ。そしてジャックは俯いたまま、その重い口を開いた。
「彼を、あの……ケントって子を」
「う、ん」
予想通り健人の名前が出てきて思わず息を呑む。しかしジャックの言葉はそこで途切れ、言葉を選んでいる様な様子だった。
叶子の肩にかかったジャックのコートを取り、叶子のジャケットのボタンを一つ一つ外していく。その邪魔にならない様に、叶子は両手に握り締めていたマグをテーブルに置くと、ジャックの指先を見ながら彼の次の言葉を黙って待っていた。
「──君はどういう風に思ってるの?」
叶子のジャケットを脱がせソファーの背にかける。そのまま両手を彼女の腰に持って行くとカットソーの裾をつまんだ。
「別に……単なるお調子者の後輩ってだけで、貴方が勘違いする様な事は何も」
ジャックがカットソーを捲り上げようと持ち上げた時、
「はい、バンザイして」
そう言われて、何の抵抗もなく言うとおりに腕を上げた。スポンッとカットソーが脱がされキャミソール姿になる。叶子の脱いだカットソーを丁寧にたたみながらまたソファーの背にかけた。
「じゃあ、何もないんだね?」
「う、ん」
何も無いかと問われたらそうでは無い。ジャックと会えなかった時期は健人に優しくされて少し気持ちが揺れた事はある。だが、そこから先へ進もうとは一切思えなかった。
「わかった」
それだけ言うと、ジャックは立ち上がり叶子に両手を差し出す。
「立てる?」
その手に自分の手を重ねゆっくりと立ち上がる。ジャックは叶子の腰に手を置きスカートのジッパーを探した。
前から抱きしめるような形で両手を後ろに回し、叶子の背中の上から覗き込むようにしてスカートの後ろにあるホックに手を掛ける。邪魔にならないようにと極々自然に叶子は腕を浮かせた。
「あの、他は? 他には何も聞かないの?」
「聞いて欲しいなら聞くけど?」
「いえ、結構です」
耳元で彼がくすりと笑う。そして、スカートのホックを外し終えると次はジッパーを降ろし始めた。
ジジジジッとジッパーが下ろされる音が聞こえ、お腹周りがふっと緩む。一番下まで下げられた時、そこで何故かジャックの動きがピタリと止まった。
「……僕、君に何て聞こうか、何て答えが返ってくるのか、って思うと凄く動揺してて気付かなかったんだけど」
「う、うん」
「今、僕凄い事しちゃってるよね」
「え?」
ストンと叶子の足元にスカートが落ち、足元を囲うように溜まる。
叶子も同じく頭が混乱していてジャックにされるがままであったが、よくよく考えるとまるで着替えを手伝ってもらっている小さな子供の様だ。彼に服を一枚ずつ脱がされ、今ではキャミソール姿。ジャックは自分を抱きしめる形で動きが止まっていて、ほんの少し身体を動かせばすぐにでも体温を感じる事が出来る距離にいるという事に二人は今更ながら気づいたのであった。
すぐ横には屈みこんでいるジャックの顔がある。急に意識してしまったせいで心臓が激しく鼓動を刻みだした。
薄暗いこの部屋はビル群の明かりが良く映えている。このシチュエーションと今の自分の状態を考えると、彼の職場にいるというのに急に体が火照りはじめたのがわかった。


