「欅通りの交差点で信号待ちをしている時に」


「………」


俺はゴクリと生唾を飲み込んだ。


「若い長身の男に声を掛けられ、連れて行かれたようです」


「はぁ?!!その時、護衛は何をしてた?!!」


「杏花様とその男の後を追ったそうですが…」


「それで?」


「少し細い路地へ入った瞬間、何者かに背後から襲われたようで…」


「ッ!!?………それで?杏花は……?」


「護衛の者が追いかけた時には既に…」


……何てことだ!!


こんな事が起こる予感がして護衛をつけたというのに。


「あっ!?発信機!!杏花の靴に発信機が付けてあるだろ?!それで居所を…」


「それが……」


「何だ!?受信出来ないのか?」


「いえ、そうでは無くて……。追跡して辿り着いた先がとあるビルのトイレでして、そこに杏花様のお荷物が…」


「はっ?!!!」


発信機が取り付けてあるのを知ってるって事か?