彼の話しを聞いていた私の目から、涙が零れた。 同情とかではない。 彼の話しは、どこかで聞いたことのある話し。 イヤ、婚約者だと聞いた時点で気付いていた。 彼が言う婚約者と、私の大切な人が同一人物だと言うことに。 その瞬間、私の記憶が溢れだした。 「千夏姉……」 気付いたら、呟いていた。 もう2度と呼ぶことのないと思っていた名前を。