頭が混乱してきた。 あまりにも彼の態度が昨日と違って、穏やかだったから。 拍子抜けしたんだ。 だから私は、警戒心を持たずに、車に乗った。 彼が私の家を知っている訳もないのに、そんなこと考えもせず。 そして、彼が隣でニヤリと笑ったのにも気付かずに。 だけど、動き出して少ししてから気が付いた。 車は、家とは真反対の方向へ走っていたから。 「私、こっちじゃないです」 すぐに運転席にいる彼に言ったけど、彼はふっと笑った。