水色べんとう

「あの……わ、私……」

「ん?ああ、ごめん。いきなりこんなこと言われても、困るか」
 
男の人は少し照れくさそうに笑った。たんぽぽみたいな笑みだった。だから、さきほどまで高く建設されていた私の心の防御壁も、少しだけ低くなった。なんという警戒心のなさだろう。

「ぼくはそこの角のべんとう屋さんで店長をしているんだ。知ってる?ひより屋っていうんだけど……」

「ああ……」

「知ってた?ならよかったぁ。変な人だと思われたらどうしようかと」
 
べつにひより屋の存在を知っていることで私の彼に対する目が変わったというわけではないが、それでもその人は、どこか安心したように笑った。