水色べんとう

「今日から、うちの家族は三人になった。さくらもしほも、寂しいかもしれないが、頑張って暮らすようにしてくれ」
 
そう言われたのは私が小学校五年生、姉が中学一年生のときのことだった。母親の突然の失踪に、悲しむというよりは驚くということしかできなかった幼い私たち姉妹は、だからお父さんがそんなふうに、私たち二人に頭を下げて「すまない」と謝ることが、不思議でならなかった。

「お父さん、お母さんは、どこへ行ってしまったの?」
 
幼い私はそう訊いた。しかし父親はなにも答えてくれなかった。ただ、拳を握りしめて、高そうな黒いスーツに皺がよってしまうくらいに、姿勢を低くしていた。私は、お父さんが悲しそうな顔をしているのを見るのが悲しくて、泣いてしまった。姉も泣いていた。みんなで泣いた。お母さんも、泣いていたのだろうか。