水色べんとう

「例えばさくらには思い人がいて、例えばその人とさくらは結ばれる運命だったとしても、笹木はさくらを幸せにしてやって」

「……どうやってだよ」

「わからねえのかよ」
 
あたしは言った。

「無私の心ってやつだよ。まあ、それは笹木しだいだけど」

「……お前はさー」

笹木は言った。気だるげな表情だった。

「今、幸せか?」

「……どうして?」

「泣きそうな顔してるから」

「は?」
「お前も、幸せになっていいんだよ」
 
笹木は言った。真っすぐな言葉。

「いいんだよ、そういう、特殊な思考とか、さあ。誰にでもあると思うし、そんなの。俺だってたまに、考えるから、そういう、変なこと。でも、それでも自分なりに不器用に生きていくんだよ」

「…………」

「そのまんまのお前で幸福になれ。それがお前の生きるすべだ」
 
あたしは。
 
そのとき、どんな顔をしていたのだろうか。わからない。だけど、どこか、嬉しかったのかもしれない。いや、それともびっくりした?とにかく。
 
握りしめた拳が震えるくらい、瞳から溢れ出そうになる水分を、我慢していた。