水色べんとう

「いいよ、隠さなくて。わかるから」

「な、なに言って……!」

「もし、さくらのことが、本当に好きならさ」

私は言った。

「頼むから、あの子を幸せにしてあげてよ」

「……は?」

「あたしにはね、そういうのしか、ないから」
 
あたしは言った。

「あたしには、他人の幸福を願うことしか、善人でいられる手段がないの。そうでもしないと、あたしは、おかしい子になっちゃうの」

「……どういうことだよ」

「あたしは全てがどうでもよかった。世界はどうでもよくてなにもかもがくだらない茶番劇に見えた。でもね、さくらは違うから。あの子は友達だから。折角できた友達だから。友達の幸福を願うことくらいしか、あたしには普通でいられる手段がないから」

「………………」

「ごめんね、つまんない話して」
 
あたしは軽く謝った。多分、変な奴だと思われているだろう。
 
でも、これは本音だった。
 
毎日、この屋上から、沈んでいく夕陽を見るたびに、「ああ、日常が消えてゆく」と思っていた。その日一日の平穏、すべてが夜の黒に塗りつぶされる感覚。あたしは、それが怖かった。暗闇のなかでのあたしは、あまりに孤独で寂しい存在だった。