その日の夜。


ベッドの上でお姉さん座りして、携帯を握り締めながら、壁に掛けられた時計を凝視する。


あと、5秒。
5、4、3、2、1…。


「…ゼロ!」


長針が12に重なった瞬間、携帯の発信ボタンを押した。


耳に流れる呼び出し音。心臓がドキドキ言ってる。


何コールか鳴った後、コールがプチッと途切れる。それは、あたしを笑顔にする合図だ。


「もしも…」

「もしもし真琴!?」


おっとフライング。


電話相手は大大大好きな彼氏の真琴。


嬉しくて真琴に被ってもしもし言っちゃった。まぁいつもの事だけど。


「…みみ、今何時か分かってるよな?」

「うんっ!真琴が家に帰って来る10時!そして真琴に電話出来る10時!」


そう。真琴は東京で仕事をしてて、一人暮らしの家に帰って来るのは10時。


10時以降は、電話しても良いって言われてる。


でも時間がもったいなくて、あたしはいつも10時ぴったりに電話しちゃうんだ。