僕らはみんな、生きている。

ふと、秀司を見ると、表情が変わっていた。

「どうしたの?」
 明らかにいつもと様子が違う。
「今思い知ったよ……」
 そう言うと、秀司はうなだれた。

 なにを?と言う前に、秀司は続ける。

「きっと僕もこういう奴だと思われるんだよ。
 まだ誰にも言ってないからみんな知らないけど……。
 
 もし精神病だなんてばれたら、変な目で見られるんだろうな。
 そうなったら、バイトはやめるしかないないんだろうな……」

 ぶつぶつとひとり言を言うような話し方で、暗い顔をしていた。

「僕には、僕には……――居場所なんかない」
 最後には苦しそうな顔で、麻美に向かってつぶやいた。

「……」

 秀司の眼が潤いを増し、まばたきをすると下のまつげに透明なしずくがひっかかった。
 
 男の人が泣くことなんて、よほどのことがないと無いことだと思っていた。
 
 声も出さず、両手でほとんど顔を覆ったまま、静かに泣いていた。手で隠れていた涙が流れて頬から首へと消えていく。