梅雨が明けて、眩しい太陽が輝く季節になっても、僕はまだどこか遠くにいた。

拓斗と花音も、ずっと元気がなかった。

それでも2人は『ヴァイオリンを頑張る』という水琴さんとの約束を守り、コンクールに出場した。

なかなか良い先生が見つからず、自主練習のみでの参加となり、精神状態も安定していなかった2人を周りは心配していたけれど、水琴さんへ聴かせるのだという想いからか、去年の僕と拓斗のように、1位と2位で終えることが出来た。

それを嬉しく思い、誇りにも思う。

自然な笑顔で「おめでとう」とも言えた。

僕は傍目から見れば、いつもと変わりなく笑えていたと思う。

何があっても気丈に振舞って見せることに自信はあったし、人に心配もかけたくなかった。

けれど。

それは分かりやすい形で失敗していた。


僕は、ヴァイオリンが弾けなくなった。