「・・・み・・・すず・・・さん・・・?」


少しずつ眼を開け、目を覚ましていく椿。完全に意識を回復させ、しっかりと緑涼の顔が見えた時、椿は緑涼から離れようとした。緑涼はそんな椿の左腕をとっさに掴む。
椿はそれを拒むかのように、緑涼の手を必死に振りほどこうとする。



「なした?な、どした椿?」



その呼びかけにも椿は応じない。
ただ、必死に緑涼の手を離そうとするだけ。



「椿!」



緑涼は右腕も掴むやいなや、大声で怒鳴ってしまった。
椿は、下を向いたまま緑涼の顔を見ようとしない。


「こっち見ろ、椿。」


椿は顔を上げようにも、気持ちがそうさせてくれなかった。すると、緑涼は、自分の両手の場所を椿の頬に変えると、手の力で無理やり正面に向けた。