椿は、自分のことを話し終えると、気力を失ったのか、その場で倒れこみそうになった。
蓮流は、さっと椿の肩を持つと、そのままそっと抱きしめた。


「そりゃ、許せないよな・・・そんなことされたら。俺でも嫌だわそんなこと。」


そういって、蓮流は椿をなで、同情する。



「許さなくってもいいと思う。事が大きすぎるもん。でも、凌縁がもし、謝ってきたら聞いてあげてもいいんじゃない?判断するのは、椿ちゃん自身だけど・・・。」


「そう・・・ですね・・・。あの女、凌縁っていうんですね。」


「うん。女郎蜘蛛の凌縁。禮漸が贔屓にしてる観穂詩酒造(みほししゅぞう)の女将さん。まさか、正嗣と知り合いだったとわね~・・・。歩け・・・そうもないね。もう少し休んでいく?」


蓮流はそういうと、浴衣の胸元から一本の竹筒を取り出し椿に渡す。

中身は水。とても冷たく、とてもあっさりとした水だった・・・。