「…意味…分かんないよ…」
「………」
「…陽雄?何か言ってよ」
陽雄はゆっくりと顔を上げ、あたしを見た。
こんなに至近距離で、陽雄に見つめられるなんて初めてだ。
不覚にもその整った顔立ちに、あたしの心臓は跳ねる。
「…おい…お前、ケガ…」
「…え?」
両目を見開いた陽雄に不思議に思い、その視線を辿ると。
……あ、本当だ。
手の平から、僅かに血が出てる。
さっきぶつかって転んだら時に、たぶん何かの拍子で切ってしまったんだ。
「気付かなかったや。こんなの放っとけば治る…」
「…アホっ!ちょっと待ってろ。逃げんなよ!?」
「は?陽雄っ…」
あたしの声は軽く流され、陽雄は走ってどこかに行ってしまった。
ていうかさりげなく、陽雄アホって言ったよね。何か陽雄に言われるとムカつく。
馬鹿な事を考えて、今の内に逃げればいいものを逃げないで待っている。
あたしは、とことん馬鹿なんだ。


