「……」



一瞬、何を言われたのか分からなかった。

頭の中で数式が解けた時のようなひらめきが起きる。



「ち、違うしっ!!」



その意味に気付いた私は、唾を飛ばす勢いで否定した。

そんな私を見てお腹を抱えて笑う香里奈。



「そっか、まだかー。休みの間にやったかと思ったのに」



やっ、やったとか。

優美といい香里奈といい、何でこの手の話題をサラリと言えるんだろう。

おかげで眠気はバッチリ覚めたけど。

私は苦笑するしかなかった。



「んじゃ、勉強してたとか?」

「まぁ勉強もしてたけどさ。実は私も……」



髪を掻き上げて耳を近付けてきた香里奈にこっそり耳打ちをする。

私の言葉が意外だったのか、香里奈は驚いた表情を見せた。



「また突然何で? 紗夜香ってそんなことしそうな雰囲気なかったのに」

「うん、ちょっと。携帯買おうかと思ってね」



周りに聞こえないようにお互いに体を近づけて、私はヒソヒソと話し始めた。

この寝不足の訳と私が携帯を買おうと思った経緯を。