ピンポーン――。


準備をすばやく終わらせてちょっと一息。

ぬるくなった緑茶を飲んでいる時に呼び鈴が鳴った。

朝のニュース番組が流れているテレビを見るとやっぱり五分前。



「いらっしゃい」



母に続き玄関に向かうと、今日も綺麗に着こなしたスーツ姿のハル君が立っていた。



「先日はすみませんでした」

「あらー、気にしなくていいんですよ。こうして代わりに来てくれたわけですし」

「……先生、おはよう」



下げていた頭を上げて私に視線を向けると、口の端を緩やかに上げて、



「おはよう。紗夜香ちゃんもこの前はごめんな」



自分は本当は何も悪くないのに謝るハル君を見て、罪悪感から胸がズキンと痛む。

優しさを無下にはできなくて嘘に乗り、首を横に振って「気にしないで下さい」と心にもないことを言う。



「さぁさ、上がって下さいな」

「おじゃまします」

「それにしても大学って大変なんですね」

「えぇ。ゼミの教授に呼び出されてはどうしようもなくて」



お母さんとハル君の会話の中に入らず聞くだけで、私は先に部屋へと入っていった。