蝶々が飛んだら

「そうだね。今日はいないね。雨だからかもしれないね」

「そんな日もあるよね」

「ん?」

「ちょうちょだって、元気ないときあるよね。お休みしたいとき、あるよね」

「……」

「でもさ、明日はきっと晴れるよ。だから、ちょうちょも飛ぶよ、きっと」

 私は、首を何度か縦に動かした。声を出すことができない。

「雨が降っても、また晴れの日はくるもんね」

 さっちゃんが私に笑いかけた。我慢していた涙がまた流れた。

 さっちゃんが私の耳に口を近づけてきた。

「だから、おねえちゃんも泣かないでね。明日、きっと晴れるからね」

 さっちゃんが笑う。

 激しく降っていた雨が優しい雨に変わっていた。雲の隙間から光が見える。

「おねえちゃんも明日、ちょうちょ探してみてね」

「うん、探してみる」

 右靴のひもを見た。小さな蝶々がそこにいた。少し斜めになった蝶々。

 今は、夏。

 蝶々が舞う夏、失恋した夏。

 小さな蝶々から大きな元気をもらった夏。

 右足の蝶々は、次の日になっても、元気にフワフワ飛んでいた。




 END