去年、おふくろが過労で倒れてそこから、俺は通っていた大学を辞めて就職をした。
おふくろは辞めるなんて、と何度も俺を説得した。

だけど、そんな体で無理して働いて、本当に帰らぬ人になってしまっては。
そっちの方が俺は困る。


俺はゆっくりと、自分の部屋がある二階に進む。
一段一段と、階段を上がった。


「………」


何でだろう。
見慣れたはずのアパートなのに。

どうしてだ、違和感を感じる。

自分の部屋の目の前に到着して、鍵を取りだすとそれを鍵穴に差し込んだ。


ガチャリと感触があって、扉を開く。


「…………」


違和感。


おふくろが使っていた自転車とか。
部屋の目の前にかけてあった傘とか。

そういったものが消えてたんだ。


そして。


俺が住んでたはずのこの部屋は。