高柳はスーツを脱ぎながら、何をやってるんだか、と自分で自分が呆れた。


あんな風に困った顔をさせたいわけではなかった


いや…。
させたかったのかも知れない。



今朝のエレベーターで、上村は高柳にわざと会話を聞かせた。


上村は高柳を勝手にライバル視しているから、そのわざとらしさに高柳はイライラしていたのだ。
女のこと以外、自分の仕事もまともにやらないくせに、後輩に抜かれるのが気に入らない上村。


そしてそんな上村を擁護する静奈にもイライラしていたのだ。


だから最後にあんな意地悪をしてしまった。



「…本当、性格悪いな。俺…」



高柳は呟く。


これじゃぁ、静奈にますます嫌われても仕方ないだろう。


そんな事を思っていると携帯が鳴った。



「はい。高柳です」

『あ、律?俺だけど』



電話の相手は社長だった


「何でしょうか」

『静奈ちゃんと仲直りした?』

「…そんな事なら切りますけど。」



高柳のイラッとした声に気がついた社長は苦笑した。



『素直じゃねぇなぁ』

「用がないなら切ります」

『ある!あるよ、律!』


高柳の言葉に慌てる社長。何だというのか。

高柳が黙って次の言葉を促すと、仕事モードの声で言ってきた。



『律。関谷部長をマークしろ。』

「関谷部長を?」



突然の名前に驚く。